湘南国際村の進入路に「子安通り」があります。
大楠山の南面が「子安の里」ですから、その名を通りに使ったのでしょう。
近代的な湘南国際村、昔ながらの「山里・子安」が隣り合わせの風景です。
それが、妙にマッチングしています。
様々な人が、子安の里を歩いて、野菜を買ったり、石仏を巡ったり、写生やバードウォッチングを楽しんでいます。
(葉山は暖かいのでもう春色、マーガレットの向かいに「子産み石」が祀られています)
私は前々から「何故?子安の里なのだろうか?」思って来ました。
「子安」の名は全国各地にあります。
「安産でありたい」「元気な子供を産みたい」「子供を立派に育てたい」、昔ながらの願いです。
だから「子安地蔵」や「子安観音」が祀られていますし、水天宮もそれです。
葉山の子安の里にも「子安地蔵」があるのかな?
探しましたが、「ピッタリではありませんでした」が、それらしいものが見つかったので、案内します。
(葉山子安の海岸、岸辺はに良く見れば丸い石が転がっています。丸い石が卵をイメージされ、生殖の神様に発展したと思われます)
私は15年前、福岡の単身赴任していました。
普段は藤崎駅から天神に向かいます。
週末は唐津(西)に向かいます。
宇美町に「宇美八幡宮」があります。
「宇美」は「産み」が転じたもの、神宮皇后が出産した事から「安産」の神社なのです。
神前に「小安石」が置かれています。
丸い海辺の石です。
これを持ち帰り、安産を祈願します。
安産であったら、石の表面に名前や生年月日を書き込んでお返しします。
お返しと同時に真新しい小安石を奉納します。
こうして、安産の願いは成就し、また別の妊婦に願いは伝えられます。
1500年も前から、小安石が繰り返し繰り返し続いてきた事になります。
(葉山の子産み石、上段の大きな丸い石がそれで、周囲の丸い石は子供石でしょう
葉山を横須賀に向けて、海岸通を行くと「子産石」が道路脇に祀られています。
漬物石大のまん丸の石です。
舟食い虫の穴が開いていますから、波に転がされて丸くなったものでしょう。
大きな丸い石が中心に在って、周囲に小さな丸い石が囲んでいます。
大きな石が小さな石を産んだようにも見えます。
「子を生み出す石という事から、生殖の神様として信仰されてきました」
案内板がかけられています。
(右の崖、祠の中に子産み地蔵、坂を下れば海で、正面に伊豆大島が見渡せます)
其処から、山側に細道を100メートルほど上ったところに、「子産み地蔵」が祀られています。
民家の崖に櫓が掘られていて、その中に丸石が二個、雪だるま状に積まれています。
「赤いちゃんちゃんこ」を着せられていますので、お地蔵さんなのだな・・・判断されます。
その足元に沢山の丸い石が積まれて居ます。
宇美八幡宮の「子安石」とまったく同じです。
この丸い石が「子産み石」、お地蔵さんが「子産み地蔵」さんです。
(全体、上段は墓標仏、祠の中が子産み地蔵さん)
「子産み地蔵」さんから、海岸通を約2キロ逗子方向に戻ると葉山の鎮守「森戸神社」があります。
その参道に「子宝石」の祠があります。
此方は丸い石が二つ並んでいます。
注連縄が巻かれていますので、これがご神体と思われます。
二つですから、どちらかが男の神様でもう一方が女神なのでしょう。
その間に、足元に沢山の小石が積まれて居ます。
小石は「子宝石」と名付けられています。
宇美八幡宮の「子安石」、子産み地蔵の「子産み石」とおんなじ役割を担う「子宝石」です。
何れも安産でしたら、石をお返しして真新しい石を奉納します。
親の思いは新しい妊婦に受け継がれます。
(森戸神社の子宝石)
私は、不思議な思いに駈られます。
丸い海岸の石(川原石でも)は地蔵和讃で積まれます。
積んでも積んでも、夜になると鬼が出てきて壊してしまいます。
悲しい・むなしい作業です。
同じ川原石でも、子安石は嬉しい循環です。
同じ川原石なら三途の川原石ではなくて、子安石になりたいものです。
葉山「子安の里」は、子供を産むにも、育てるにも最高の場所であるから、「子安」の名がついているのでしょう。