相模川の中流域、座間の休耕田では「向日葵」を咲かせて、「町おこし」をしています。
家内を誘って一面に咲いた向日葵を見に行きました。
青田では今稲も花を咲かせる季節です。
私は向日葵も良いが、稲の花も見たいと田の畔を歩いてみました。
もう稲穂が伸びています。
座間の稲田。もう花が咲いています。遠くの山は大山です。稲田との境、黄色いのが向日葵の花。
手前は廃品のマネキンを使った「色っぽい案山子」。
稲の花には花弁はありません。
昆虫に見てもらう必要が無いからです。
緑色の「えい(もみ殻になる)」が二つに割れて、雄蕊が飛び出しています。
雄蕊の根元に雌蕊があって、風に吹かれて受粉が完成します。
「えい」は受粉の確立を上げるための防風の役割をしています。
稲の花は2時間もしたら閉じてしまいます。
素人目にも今年は豊作に見えます。
稲の株が沢山に分かれて大きな稲束になっていますし、稲の花穂が長いように見えるからです。
稲穂の先に出ているのが稲の雄蕊。その下に3枚花弁の白い花が見えます。
これが沢潟の花で、もう種が出来ています。
私は稲の株を見詰めました。
稲の根元に白い花が咲いています。
一つ一つの花は小さくて可愛いのですが・・・・、
白い花は稲田の端から中まで万遍なく咲いているのです。
家内に声をかけます。
「沢潟(おもだか)が咲いているよ!」
沢潟は家内の実家の家紋でありますから…、馴染みもあります。
畔沿い
沢潟は最初に畔沿いに生え、次第に田圃の中央に進出しています。
沢潟は白い三枚の花弁で、総じて地味な感じがします。
でも、葉っぱは細く長く、三枚に切れていますから特長があります。
沢潟が福島正則や毛利元就の家紋になったのは、その葉の形が「矢じり」だったからでしょう。
戦いは先ず矢を射る事から始まります。
沢潟紋は攻めて良し、守って良し、武勇の誉れ高い家紋だったのでした。
沢潟紋
「おもだか」は和名で「面が高い」という意味でしょう。
葉っぱの形だけ見れば「面長」ですが、花を見下ろす高いところに葉っぱがあるので、
「面が高い」と名付けられたのでしょう。
我が家も稲作をしていました。
農地解放後十反余りの田圃が残されました。
それを、近くの農家の応援を得て、田植えから稲刈りまでしていました。
でも、その間の「田の草とり」だけは母が一人で担う仕事でした。
田圃に生える雑草(粟や稗、そして沢潟等の湿性植物)を抜くのです。
腰をかがめて、指先を開いて未だ幼い雑草を引き抜きます。
この作業を4、5回程度は行うのでした。
母一人の作業としては重労働でありました。
沢潟の特長は何と言ってもユニークな形をした葉っぱです。これが「オモダカ」の名の由来になりましたし、
矢じりの形なので武家の家紋になりました。右下の緑の球は種です。
小学校の父兄参観日など、母は田の草取りを終えたそのままの姿で現れました。
晩年母によく言われました。
「お前だけが、父兄参観に少し小奇麗な格好をして来て欲しい!」言われたもんだ・・・、と。
私はそんなにストレートに言っただろうか?
疑問なのだが・・・、母がもう少し綺麗でいてほしい…、思っていたのは間違いありません。
我が家の田圃は十分田の草取りが出来ないので・・・、多分沢潟の花が咲いていたことでしょう。
農家の人が「盛徳寺の田圃は稲を育てているのか?沢潟を育てているのか?多分両方育てているのだろう。」
思った事でしょう。
今は田の草取りの機械もありますし、カルガモ農法も馴染みになりました。(カルガモに雑草を食ってもらう)
でも、減反政策で休耕田も増えていますので…、休耕田を根城に沢潟の種が田圃に流れてきているのでしょう。
いっその事、稲刈りを終えたら…、沢潟の根っこを彫り出して塊茎(くわい)を収穫したら良いと思います。
クワイはおせち料理に欠かせないのですから、厄介者が使えます。
でも、野生のクワイは固くて料理市し難いのかも知れません。
母が聞いたら…、屹度真顔で言うことでしょう。
「そうだねえ、沢潟(花くわい)も食べてみようかねえ・・・、里芋よりは栄養価が高いようだし・・・。」
弥生時代の稲田遺跡から沢潟の種が発見されています。
稲作当初から…日本人は沢潟と顔を突き合わせてきたのでした。
最後に万葉集から、
あしびきの山澤(やまさは)回具(ゑぐ)を採みに行かむ
日だにも逢はせ母は責むとも
現代語訳は次のようなものでしょう。
”たとえ母が責め様と、私は山の沢に入って沢潟の花を摘んで貴女に奉げ、逢瀬を楽しみましょう。”
この歌の回具(ゑぐ)が何の花であるか諸説ありますが、沢潟である、とした説もあります。
エグい味のする山野草は数多くあります。
でも、沢潟ならば・・・、やはりエグい(苦味・辛味がある)ので一工夫必要だということでしょう。
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