私の友人の話です。お父様が植物学者で、軽井沢に別荘をお持ちでした。
その庭に山野草を愛しんで育てておいででした。
晩年は多くの時間を軽井沢の自然の中に身を置いて過されたそうです。
そして、友人に「ソロソロ、別荘をお前達の好きなように建て替えたらよい!」話されていたそうです。
友人の別荘のある南軽井沢、三井の森のお隣です。田圃は耕作を止めたので茅の原に戻ろう としています。今頃は蛍が乱舞している事でしょう。
お父様も亡くなられ、友人も定年退職しました。
お孫さんやら家族が増えました。建物を新築する事にしました。
出来るだけ山野草の庭をそのまま残したい、考えました。
傾斜地の地形に沿って玄関が2階で、上下3階建ての建物にしました。
計画通りお庭は壊されず、山野草を見ながら回遊できるデザインはお父様の時代と変わりません。
庭の南外れに渓流が流れています。
渓流には野鳥も集まります。珍しい蝶が梢の先を飛んでいます。
屹度卵をあの葉の裏に産みつけるのでしょう。
今年初めて蝉の声を聞きました。望遠レンズで覗くと「ヒメハルゼミ」のようです。
蝉とアマガエルとが競って鳴いています。
皆、恋の季節なのでしょう。
姫春蝉がしきりに鳴いていました。
頭上から響いてくるので「蝉時雨」と言うのだな・・・、実感しました。
友人は墨絵や鎌倉彫など多趣味な人です。
これからは大半の時間を軽井沢に籠もって製作と自然鑑賞に過すそうです。
お父様の愛しまれた山野草を大事にしながら。
でも、素人の友人はどれが貴重な花なのか、どれが単なる雑草なのか、全く解りません。
暫く、植物達と付き合ってみなければ、判断が付きません。
お父様の使われた図鑑には「花」は載っていても、芽や葉っぱは殆ど出ていませんから。
別荘の窓から外を見る。庭は自然のまま、細道を開いて「山野草回遊庭園」にしています。
生花は庭の瑠璃草の花。
ですから、当面は生えてくる草は総て貴重な山野草と思って、面倒を見ざるを得ません。
私に「君は自分よりは植物に詳しいだろうから、一緒に見て欲しい・・・。」
と言われても、軽井沢の山野草は私とて素人です。
でも、興味は大いにあります。最近ようやく植物の美しさに気づくようになりました。
山野草鑑賞には年齢と観察の積み重ねが必要なようです。
草薮に埋もれてしまいそうな瑠璃草
この時期の軽井沢は春の花が終わって、夏の花が準備をしている、端境期です。
茂みのおくには「瑠璃草」が懸命に咲いていますが、他の草の中に埋もれてしまいそうです。
他の草丈がもう一段伸びる頃には枯れてしまう事でしょう。
名前の通りの瑠璃色です。
別荘の窓から樹木を見詰めていれば、大瑠璃(全身瑠璃色のフィンチ)や赤ゲラを観察出来そうです。
二人静は今が盛りでした。
二人静は今が盛りです。
大葉のような葉っぱの上に二本の花軸が伸びて、その周囲に白い小花が無数に咲いています。
白拍子が二人で舞っているようなので、この名があるのでしょう。
でも、見れば花軸が三本のものも、5本のものまであります。
ならば三人静、五人静、と呼ぶのかもしれません。
それだけ、この環境が二人静には適しているのでしょう。
一人静はもう花が終わって実をつけようとしていました。
此方は「三人静?」「5人静?」
今、最も目立つのは「九輪草」です。
庭には朱もあれば、白も、ピンクもあります。
綺麗なので山野草と言うより「花壇の花」の印象です。
形は桜草と酷似しています。でも桜草より背丈が高く、一本の茎がスッと伸びています。
そしてその茎の周囲に小花が輪の様になって咲いています。
その形が五重塔の上層屋根上に聳え立っている相輪を思わすのでこの名があるのでしょう。
庭には渓流が流れています。その岸辺に咲いた朱色の九輪草
此方は白い九輪草
庭の端、崖には沢山の百合が蕾をつけています。
友人は「山百合だろう」言っていますが、どうも山百合よりは背丈も低いし、体が華奢なようです。
私は「笹百合」「姫百合」の種ではないかと期待します。
百合の傍らで咲いているものがいます。
一見すると「浦島草」「マムシ草」の仲間です。
茎がスックト伸びてその先に仏炎苞を開いています。
でも、明らかに違います。総じて緑色で花の先端だけが紫色をしています。
友人に聞けば「軽井沢テンナンショウ」だそうです。
テンナンショウとは聞きなれないし、覚えにくいのです。
確認すれば「天南星」と書くのだそうです。
なんだ「南十字星」のような名前だな・・・、思いますが、漢方に由来する名前のようです。
昨日木喰上人が14歳で出奔して22歳で出家するまで薬屋に奉公した・・・、書きました。
薬の行商の合間に薬草の採取をしていました。
天南星は痰を取り除き、体に溜まった水毒から来る痛みを鎮める働きがあるそうです。
そう思って見詰めると「蒟蒻芋」にも似ています。
改めて仏炎苞の筒部を見ました。淡緑色で白と暗紫色の縦縞模様が入っています。
江戸模様のようでとてもお洒落な感じがします。
舷部の色は暗紫色で著しく長く水平に伸びています。
素適な仏炎苞です。
軽井沢テンナンショウ。中々粋でお洒落な花です
7月になれば、夏の山野草が咲きだすことでしょう。
友人は、お父様と同じように、この別荘で山野草と一緒に過す事でしょう。
友人の肩越しにはお父様も山野草を見詰めておいででしょう。
「そう、この花は健気だから、美しいだろう・・・・、お前もそれが解る歳になったのか・・・」
そんな声を聞いている事でしょう。
山吹草の花、名前の通りの花で覚えやすい
※ 撮影は23年6月13日でした
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