梅雨の晴れ間を鎌倉の広町緑地に出かけました。
多分、蛍が出ているだろうから・・・・、その様子を確認しよう・・・・、そんな目的でした。
昭和47年、鎌倉の西、七里ヶ浜を見下ろす尾根一帯に開発計画が上がりました。
南側は西武の七里ヶ浜、西は片瀬山、北は鎌倉山・・・・・、周囲は開発が進んでいました。
”鎌倉の緑を残そう” 市民が立ち上がります。
平成8年、鎌倉市は一帯を48haを「都市林」として保存する方針をだし、
平成15年「国庫補助事業」として決定します。
民間人が小さな土地を多数買って、開発を阻止する・・・・、そんな手法ではなく
都市林公園として一帯を保存整備しようとするものでした。
既に38haの買収を終えています。
「都市林公園」とは聞きなれませんが・・・・、広町緑地に行けば解ります。
市民の近くに森林を遺して・・・・、その自然の中を散策して・・・、豊かな自然に触れましょう・・・、
そんな計画です。東京では砧緑地なども都市林公園でしょう。
ウィーン郊外にある「ウィーンの森」はその代表でしょう。
沢山の人が森の中を散策する姿が見られます。
鹿肉を食べさせるレストランも森の中にあります。
今は整備途上ですが、いずれウィーンの森のように快適な都市林になる事でしょう。
広町緑地の案内図(NPO鎌倉広町の森市民協議会のHPから転載)
広町緑地の入口は「御所ヶ谷」です。
天皇が来られたのかな? 謂くありそうな名前です。
御所ヶ谷の正面には小山があって、竹ヶ谷城跡と案内されています。
中世(?)には砦のようなお城があったのでしょう。
広町緑地の南側は旧東海道・・・・、日本武尊が東征に通った道です。
若しかしたら・・・・・・、此処に日本武尊が逗留したのかも知れません。
谷戸の土手にはもう山百合が咲いています。
此処は南斜面がが多いので山百合も早くに咲き出すのでしょう。
他の雑草に負けまいと一生懸命背伸びして、その先に数輪の大輪の花を咲かせています。
芳香が辺り一帯に漂っています。
もうじき、半夏生も白くなることでしょう。
広町緑地には山百合が咲き始めました。
長い間休耕田であった棚田も改めて耕されて・・・・、田植えを終えています。
如何にも市民が手植えした・・・・、下手な植え方です。
私の母が植えたような・・・・、
真っ直ぐに田植えするのは・・・・、相当の技量が必要です。
でも、疎らで曲がりくねった田植えも…、心がこもっていて良いもんです。
燕が田の上を低空で飛んでいます。
二度目の巣作りをするつもりなんでしょうか?
土を咥えて、飛んで去ります。
広町緑地では・・・、長い間休耕田であった棚田も耕されて・・・、
この辺りに源氏ボタルが舞っている筈です。
畔で奇妙な鳴き声が聞こえます。
”クエッ・クエッ・・・”二度鳴きすると・・・、10秒ほど鳴き止みます。
暫くたつと・・・、また”クエッ・クエッ” 鳴きます。
私は・・・・、水鳥のクイナが隠れているのかな? 目を凝らしました。
どうも・・・・、鳴き声は土の中から聞こえてくるようです。
土の中にはオケラが棲んでいるんですが・・・・、鳴き声が全く違います。
鼠かモグラか?
そっと、鳴き声のする辺りに近寄ってみました。
田の畔で、雨蛙が山かがしに噛まれて、苦闘中でした。その蠢き声が響いていました。
驚いたことに、鳴き声は雨蛙でした。
足を山かがし(蛇)に咥えられています。
山かがしは雨蛙を呑み込もうと、鎌首に力を込めています。
吞まれてたまるか! 雨蛙は前足で草を掴んで・・・、離すまいと必死です。
雨蛙の背は綺麗な鶯色です。
お腹は真っ白です。
白いお腹が膨らんで・・・・・、萎むときに”クエッ・クエッ”と鳴くのです。
”助けてくれ・・・!” とも聞こえますし・・・・・、”お前なんかに吞まれてたまるか!”とも聞こえます。
雨蛙が鳴くと・・・・、雨が降ると言いました。
だから…雨を呼ぶ蛙が雨蛙で・・・・・、田植えには欠かせない蛙さんです。
でも、雨を呼ぶ鳴き声は軽快で・・・・、「ゲッゲッゲッゲッ…」「クワックワックワッ…」と賑やかです。
夜の田圃で最も鳴いているのは・・・、この小さな雨蛙です。
「ゲッゲッゲッゲッ…」「クワックワックワッ…」は雄が雌に、
”僕は此処に居るよ・・・・!” 呼ぶ声です。
でも、流石に断末魔の雨蛙・・・・・、鳴き声は普段と大違いです。
山かがしは・・・、これも未だ小さいものです。
多分昨年の夏に出生し、未だゼロ歳児でしょう。
一寸大きなミミズのサイズです。
でも、小さいからでしょう、赤や黄色の鮮やかで無気味な警戒色です。
こんな大きさではアオサギやノスリに見つかったら・・・・、そく捕食されてしまうでしょう。
カラスだって、カケスだって・・・・、好物にするものでしょう。
だから・・・・、目立ちやすい畔から早く安全な叢の中に引きこんでしまおう・・・、
必死です。
山かがしは自分自身が安全な叢に身を隠してじっくり呑み込もうとしますが、
雨蛙は草にしがみ付いて・・・・、必死です。蛇は太さも1㎝足らず長さも30㎝足らずの幼生です。
一見すれば、雨蛙の幅は山かがしの3倍以上あります。
如何に山かがしの顎が取り外し自由でも、3倍以上横幅のある雨蛙を呑み込むのは無理というものです。
山かがしの身の丈に合った・・・、足が生えたばかりのオタマジャクシが頃合いの獲物でしょう。
そんなオタマジャクシなら田圃の中に沢山いそうです。
でも、山かがしの本性は・・・、小さなオタマジャクシではなく、成長した雨蛙を選ばせたのでしょう。
誰でも、雨蛙は好きで、山かがしは嫌いです。
若いころの私なら・・・・、雨蛙を救出してあげたことでしょう。
でも、今回はじっと見守るだけにしました。
雨蛙も山かがしも必死に・・・、命を懸けて奮戦しているんですから・・・・、
私が空からゴッドの手を差し伸べるのは・・・、遺憾でしょう。
既に、山かがしは私の存在に気付いて・・・・、急いで草叢に身を隠そうと焦っているようです。
鎌首を10㎝ほど上げて、雨蛙を空中に持ち上げます。
そのまま、草叢に隠れようとしますが・・・・、雨蛙は握った草を離しません。
お蔭で・・・・・・、山かがしの意に反して・・・・、二匹は畔で格闘し続けています。
絶体絶命の雨蛙ですが・・・、逃れたい本性は草を離しません。
”このままでは・・・・、自分自身が危ない・・・・!”
山かがしは危険を察知したのでしょう。
空中から見詰める私の視線がノスリの眼のように見えたのかも知れません。
”ペッ” 雨蛙を離しました。
そして、慌てて草叢の中に隠れてしまいました。
山かがしは獰猛なようですが、実は臆病な蛇なのです。
人間や猫に遭遇すると、さっさと逃げてしまいます。
青大将のように向かってくることは滅多にありません。
危機を脱した雨蛙は、足の筋肉の奥深く蛇の刃が突き刺していた・・・その傷も深いのでしょう・・・、
特に血が出ているわけではありませんでしたが・・・・、
暫く足を伸ばしたままで、だらんとしていました。
充分休んでおもむろに・・・・、好きな田圃の中に向けて動き出しました。
まあ、これで良かったのでしょう・・・・。
都市林では生物の営みが観察できる・・・・、それが一番の魅力です。
窮地を脱した雨蛙、しばらく休息してから田圃の中に消えて行きました。
【追記】
このブログを書き上げた時、NHKラジオ「スッピン」で蛇の目傘を話題にしていました。蛇の目傘は死語か?という事です。コメンテーターの高橋源一郎氏もアンカーの藤井アナも蛇の目とは和傘の事だ、と説明していました。
写真中の蛇の眼が丸い事から・・・・、傘に同心円状の絵柄を描いたものが・・・、蛇の目の傘の事であります。
偶々、和傘の絵柄に蛇の目が多かったことから、和傘と同義語のように扱われていますが、正確ではありません。屹度クレームが出て訂正されることでしょう。
気持ち悪い蛇ですが眼はまん丸で可愛いもんです。